ふぅ・・・。やっと、講義が終わった。次はお昼だ!と思ったけど。今日の午後の講義は麻衣と違うんだよなぁ・・・。麻衣は午後に何も無いからって、先にチア部に行っちゃった。お昼はチア部の子と食べるらしい。
う〜ん・・・。私もチア部に行こうかな?でも、また講義のために戻ってくるのも面倒だしなぁ・・・。
そう思いながら、教室を見渡すと・・・。あ!そうだ、この講義は由鷹と一緒だったんだ。
由鷹と食べようかな・・・、と思ったけど、由鷹は友達と居るのが見えた。・・・たぶん、その人たちと食べるんだろう。
そんな中、私が誘ったら、いろいろと勘ぐられちゃうだろうなぁ。本当は家族なんだから、一緒に食べてても普通なんだけど。・・・って、まだ正式には家族じゃないんだった。
でも、正式な家族になるには、ちゃんとお兄ちゃんたちに妹って認めてもらわないとダメだから、ママたちの再婚を反対してる由鷹に認めてもらうためにも、一緒にお昼を食べるっていうのは、良い作戦だと思うんだけどなぁ。
って、そんな気持ちでお昼食べても美味しくないか・・・。でも、本当、再婚を認めてくれているのは雪斗さんだけだし・・・。
・・・あぁ!!もう今日は、一人で食べることにしよう!
そう思い直して、私は机の上の筆記具を片付け始めた。
すると、視界の端に見覚えのある服装が見えた。顔を見なくてもわかる。これは・・・。
「。」
ほら、やっぱり。この声で間違いない。まだ顔を確認したわけじゃないけど、今朝も見かけたこの服装。今まで何度も聞いた、この声。絶対に間違えるわけがない。
そう思いながら、私は顔を上げた。
「由鷹!どうしたの?」
予想通り、由鷹だったわけだけど・・・。さっきまで、向こうに居たのに、どうして目の前にいるんだろう?それに、さっき見えた友達も居ないみたいだし・・・。
「何か用・・・?」
「用が無きゃ、話しかけるなってことか・・・?」
「そこまで言ってない!でも、用が無ければ、由鷹が話すなんて無いじゃない。」
「そ、そんなことねぇよ!!」
「あるわよ!!」
私たちは、仲が悪いわけじゃないけど、顔を合わせると、つい喧嘩になってしまう。
「・・・って、そんなこと言ってる場合じゃなくて。どうしたの、由鷹。私に用事があったんじゃないの?」
「・・・あぁ。・・・お前さ、昼も講義あるだろ?一緒に昼飯、食わねぇ?」
それは、さっき私も考えていたこと。由鷹から誘ってくれるなら、それは構わないけど・・・。
「友達は?さっきまで、一緒に居なかった?」
「アイツらは、昼から無いんだって。そう言うお前も、藤本は?」
「麻衣も昼から無いの。」
「そっか。じゃあ、ちょうどお互い相手いねぇじゃん!一緒に食堂行こうぜ。」
「うん!いいよ。」
1人でご飯を食べるのが嫌いってわけじゃないけど、やっぱりご飯は誰かと食べた方が美味しいもんね。
そう思いながら、私は机の上に広げていた筆記具とかを片付け始めた。
「まだ片付けてなかったのかよ。本当、ってとろいよな。」
・・・ムカ。
「考え事してたの!」
「どうせ、くだらないことだろ?」
「私も誰とご飯食べようかなー、って考えてたの!由鷹も同じこと考えてたんじゃない。」
「それだったら、尚更とろい。俺は同じ考えをして、ここまで来てんだから。」
そう言った由鷹は意地悪く笑っていたけど、本当に言い返すことができなくて、黙って片付けを続けた。
・・・やっぱり、由鷹と食べるより、1人で食べる方が良かったかも。
「・・・はい。お待たせしましたっ!準備、出来たよ!!」
「おう!腹減ったぜ〜・・・。」
私が嫌味っぽく言ったのに、由鷹は全く気付いていなかった。・・・もう、ご飯のことで頭がいっぱいなのね。
そんな単純な由鷹を見て、やっぱり由鷹と食べる方が楽しいよね、なんて思い直した私も、よっぽど単純だけど。
「もしかして、次の講義って、俺ら同じじゃなかった?」
「そうだった?」
「うん。俺、を見たことあると思う。」
「・・・あぁ!私もある!あれだよね。結構太ってる教授で・・・。」
「そうそう!何言ってるか、よくわかんねぇんだよなー。」
「そうなの!それなのに、注意する時だけ、すごく声が大きいでしょ?」
「あれ、マジで止めてほしいよなぁ。突然、大声出されると、何もしてない俺らまで驚くし。」
「だよねー・・・。」
「ってことは、やっぱ同じだな。」
「そうだね。」
「じゃ、昼食べた後、一緒に行くか。」
「うん。一緒にご飯食べた後、向かう場所が一緒なのに、別々に行くのもおかしいしね。」
「たしかに。」
私たちは、そんな風に笑いながら、楽しく会話をしていた。
なのに、由鷹が突然、顔を引きつらせた。
「・・・由鷹?」
「・・・。あれ、何だと思う・・・?」
「ん?」
由鷹が前を指した。おそらく、前には食堂が見えるはず。・・・が、それは見えなかった。なぜなら、そこにはたくさんの女の子が見えたから。
「え〜っと・・・女の子たち。」
「それはわかってる。あの原因が何だと思うってこと。」
「・・・・・・まさか。」
私には1つだけ思い当たる節がある。だって、この風景、何度か見たことがあるから。
「俺も、まさかとは思うけど・・・。」
「そんなことないよ。さすがに、そこまで暇じゃないでしょ?」
「そうだけど・・・。」
そう言って、由鷹がため息を吐くと、その女の子の集団の中から、予想通りの人物が出てくるのが見えた。
「やぁ、ちゃん。・・・って、由鷹も居たの。」
「俺は居てもいいだろ!むしろ、なんで、雪兄が居んだよ・・・!」
「いいじゃない。近くで雑誌の撮影してたから、お昼休憩は可愛い妹と食べようと思って、ここに来たんだよ。」
「・・・ったく。」
「(残念だったね、由鷹。折角、ちゃんと2人きりでご飯を食べれるチャンスだったのに。)」
「なっ・・・!!」
耳元で何かを言われた由鷹は、すごく慌てている。・・・何を言われたんだろう?ただ、由鷹はお兄ちゃんの中でも、1番恐れているのは、この人、雪斗さんらしい。
私からすれば、唯一ママたちの再婚を認めてくれているし、家のわからないこととかも教えてもらえるし、1番優しいお兄ちゃんだ。ただ、女性に大人気の芸能人で、すごくカッコイイから、緊張する相手でもあるんだけど。・・・でも、結局由鷹以外は緊張するよね。いろいろな意味で・・・。
「じゃあ、今日は3人で仲良く食べようか?」
「はい。」
「はぁ・・・。」
「由鷹?何か文句でもある・・・?」
「・・・ありません。」
「うん。それは良かった。」
雪斗さんはニッコリと優しく微笑むと、私と由鷹の後ろに回って、私たちの背中を押した。
「今日は、僕の奢りだよ。」
「今日は、って・・・。雪斗さん、ここに来たときは、いつも私たちに奢ってくれません?いいんですか・・・?」
「いいだろ、。雪兄がそう言ってんだから。」
う〜ん・・・そう言われても・・・。でも、逆に人気モデルの雪斗さんに、そんな心配をする方が失礼なのかもしれない。
「じゃあ、お言葉に甘えて・・・。」
「うん、気にしないでね。」
そう言って、雪斗さんは私の頭を軽く撫でた。
「雪兄・・・!」
「ん?どうかした、由鷹。」
「あんま、に触るなよ!」
「どうして?」
「そ、そりゃ・・・。だって、困るよな・・・?!」
由鷹は私に同意を求めて欲しそうに言うけど。困ることなんて・・・。
「え?ん〜・・・。」
「ちゃん、困ってないみたいだけど?」
「周りの目とか、いろいろあんだろ?!」
また由鷹が私に必死に言ってきた。・・・そうか。さっきの女の子たちのことを言ってるのか。
それは確かに困る。私が雪斗さんなんて、素敵な人に頭を撫でられてたら、「一体、どういうつもり?!」とか言われるのは私の方だ。
「そうだね・・・。周りの女の子たちが羨ましそうに見てますし。」
「別に妹なんだから、いいじゃない。」
雪斗さんに言われて、私も納得してしまう。
そうだ。いざとなれば、妹だからで済むんじゃないか。
「そうだとしても、ダメなものはダメなんだって・・・!」
まだ強く言う由鷹に、それもそうかと思ってしまった。
妹だから、で済むとは限らないし、実際に血が繋がっていないのは事実だし。
「もう・・・。由鷹は子供なんだから。・・・わかったよ。外では気をつける。」
「家でも気をつけろって!」
「なんで?」
私も思わず聞いてしまった。だって、家だったら、誰の目も気にすることないでしょ?
「なんで、って・・・。何でもいいだろ!さ、早く飯食おうぜ!」
明らかに話を逸らそうとする由鷹に、私が首を傾げていると、後ろでクスクスと笑う雪斗さんの声が聞こえてきた。
・・・本当、由鷹ってよくわかんない。
その後、3人でご飯を食べると、雪斗さんは「撮影が始まるから」と少し急いで立ち上がった。
・・・そんなに忙しいのに、無理してまで、ここで食べたかったのかなぁ?
「お仕事、頑張ってください。」
「うん、ありがとう。2人も授業、頑張ってね。」
「はい。」
「それと、由鷹・・・頑張るんだよ?」
「うるせぇ!さっさと行けよ!!」
「由鷹・・・?」
「うっ・・・。ごめん、雪兄・・・。」
「うん、いいよ。それじゃあね。」
雪斗さんは私たちに手を振って、食堂から出て行った。講義にはまだ少し早いけれど、私たちもそれに続いて、食堂から出ることにした。
それにしても・・・。
「由鷹って、本当、雪斗さんに弱いよね。」
「放っとけ!」
「私からすれば、1番優しいお兄ちゃんなんだけどなぁ。」
「それは、が雪兄の恐ろしさを知らないからだって!!」
「そんなこと言っていいの?・・・って、雪斗さんにまた怒られるよ?」
そう言うと、由鷹は慌てて周りに雪斗さんがいないか確認していた。
それが可笑しくて、私は思わず声に出して笑った。
「・・・!!」
「でもさ、そこまで怖がる必要は無いんじゃない?私には、本当よくわからないよ。雪斗さんより、よっぽど総一郎さんの方が怖い。」
「総兄は真面目だからな。」
「昴先輩もほとんど目合わせてくれないし・・・。」
「昴はいつもあんな感じだから。」
「由鷹は・・・由鷹だし・・・。」
「何だよ、それ?!」
由鷹にそう言われて、少し笑った私だったけど。・・・何だか、愚痴を言ったみたいになってるよね?
本当は心配なんだ。私が妹として認めてもらえなきゃ、お兄ちゃんたちはママたちの再婚を反対するって言ってるのに、総一郎さんと昴先輩は距離が一向に縮まってる気配がしないし。
由鷹だって、元々友達だったから良かったけど、妹としては認めてくれない。・・・まぁ、私も由鷹をお兄ちゃんだと思いたくないけど。
「じゃあさ・・・は、やっぱり雪兄が1番いいと思うわけ?」
それは、もちろん・・・。
「影山さんが1番いい。」
「あぁ・・・影山・・・ね。じゃなくて!俺たち兄弟の中で!!」
影山さんは、春日家の使用人で、私たちのご飯を用意してくれたり、朝は靴まで並べておいてくれたり・・・。身の回りのことをいろいろとしてくれる人だ。
私は使用人っていう存在に慣れてないから、すごく悪いとは思うんだけど・・・。雪斗さん以上に、春日家のことを教えてもらえるから、1番ありがたい。
「兄弟の中で?」
「そう。・・・やっぱり、雪兄?」
でも、兄弟の中か・・・。う〜ん・・・。それは難しいけど、やっぱり・・・。
「う〜ん・・・。由鷹かな。」
「俺・・・?」
「うん。結局、1番話しやすいし。今も、ちょっと弱音吐いちゃったし。・・・由鷹が1番気兼ねなく喋れるもんね。由鷹がいて、本当に良かったと思ってるよ。」
だって、全員緊張しちゃうもん。そう考えると、昔から知り合いの由鷹の存在がありがたい。
「俺・・・かー・・・。」
「だから、あとは由鷹がママたちの再婚を認めてくれたら、文句なしなんだけどなぁ。」
「それは無理。」
あっさり言う由鷹に、迷いも無く突っかかれるのは、やっぱりありがたい存在だ。・・・総一郎さんに突っかかる勇気なんて、絶対に無いもん。
「なんでよー!別に、いいでしょ?!」
「お前が妹なんて、絶対に嫌!」
「私だって、アンタがお兄ちゃんなんて、絶対に嫌なんだから!!」
「じゃあ、再婚に反対しろよ!」
「それは・・・ママには幸せになってほしいもん。」
「お前の意見は無いのかよ。」
私の意見・・・?ママに幸せになってほしい。それが私の意見じゃないの?
「お前はそれでいいのか?」
「・・・どういうこと?」
「お前は、俺と兄妹になるのが嫌なんだろ?」
「それはそうだけど・・・。それ以上に、ママの幸せを邪魔したくないっていうのが私の気持ちだから。」
「そうかよ。」
由鷹は、不機嫌そうにそう言って、黙った。
・・・何よ。文句でもあるの?そんなに私が妹になるのが嫌?
「ママたちが再婚しても、由鷹のことは、絶対お兄ちゃんって呼んでやらない。」
「あぁ、呼んでもらわなくて結構だ!」
本当、腹が立つ・・・!!
でも・・・。私だって、由鷹のことをお兄ちゃんと思いたくない、って気持ちはあるし。だって、私たち、昔から友達だったんだもん。急に、兄妹なんて思えないよね?
「由鷹・・・。」
「なに?」
私が少し落ち込みながら呼んでるのに、由鷹は相変わらず不機嫌に返した。
・・・たしかにムカつくけど。これが由鷹だと思う。そして、私はそんな由鷹でいてほしいと思う。
「本当に、ママたちが再婚することになっても・・・。由鷹のことは、由鷹って呼んでもいい?」
「・・・?どういう・・・?」
「ママたちが再婚したら、由鷹は私のお兄ちゃんってわけだけど・・・。私にとって、由鷹は由鷹なんだ。だから・・・何て言えばいいのか、わかんないけど。とにかく、ずっと由鷹って呼び続けたいの。」
自分でも何が言いたいのか、よくわからない。
ただ、何となく、由鷹との今までの関係と言うか、そういうものを壊したくないと思った。
「・・・。」
でも、由鷹も何となく理解してくれたのか、不機嫌な声じゃなくなっていた。どちらかと言うと、私を心配してくれてるようだった。
「兄妹になっても、血が繋がってるわけじゃないから・・・。その・・・。今までみたいにしていきたいの。・・・あぁ、ごめん。何かよく、わからないよね。」
「・・・いや、俺も言いすぎた。ごめん。」
こうやって、私がちゃんと説明できてなくても、わかってくれるっていうのが、やっぱり由鷹の良いところだよね。
「ううん、ありがとう。」
「でも、心配すんな!」
由鷹がいつものように笑って、頼もしいことを言ってくれた。それに、ほんの少しドキッとした。
・・・まぁ、由鷹も見た目はカッコイイ方に入るからね。仕方ない。
それにしても、一体何に心配するなってことだろう?すると、次に由鷹の口から出た言葉は・・・。
「再婚は、俺らが反対するから!」
・・・だった。
いや、そうじゃなくて。
「だから!私は、再婚は認めてほしいの!」
「なんでだよ!」
あぁ、もう!!本当、由鷹と話してると疲れる!!!
だけど。こうして由鷹と話すのも、やっぱりいいなぁと思う。由鷹と居ると、落ち着けるんだよね。と同時に、鼓動が高鳴ることもあるんだけど・・・。その理由は、よくわかんない。きっと、いつかわかる日が来るよね!
その前に!!由鷹には、ママたちの再婚を認めてもらわなきゃ!!!
・・・・・・やっちゃったぜ☆(黙れ)いやぁ、まさか由鷹くんにはまるとは・・・。
最初は、昴先輩(と言うより、谷山さんヴォイス)目当てで体験版をやっていたんですが。体験版だけじゃ、昴先輩は結構冷たいままなんですよね。でも、元々片想いしていた由鷹くんは、体験版のときから可愛いんですよ!というわけで、書いちゃいました★(笑・・・えない?)
私は本編未プレイですので、本当に何もわかりませんが。公式サイトを見る限り、由鷹くんのことも、「由兄」と呼ぶシーンがあるようです。体験版のみプレイ済の私としては、「由兄」に違和感があったので、こんな話にしてみました。
あまり夢小説っぽくないかもしれませんが・・・。実際のゲームをプレイすれば、より甘い話を味わえると思います!危険な話に抵抗の無い方は、是非ゲーム本編でお楽しみください(笑)。
('08/08/29)